第3章 介護  (その4:移動・移乗)
           
  つぶやき話のテーマ1:  移乗用具
           
 「移乗用具としてスライドボード、バスタオル、ビニールシートがある。           
  スライドボードは一人介助、タオルやシートは二人介助となる。  」           
            
  要介護者を車椅子からベッド等へ移乗する時、介護職員が要介護者の身体をつかみ、抱え           
 上げたりする。この移乗介助は、両者とも気を使う。気持ちの準備をして、声を掛け合いながら           
 移乗する。介護職員が一方的に行うと、要介護者の身体に負担がきて、痛い思いをされること           
 がある。要介護者の移乗に伴う身体な負担を小さくするために、移乗用具がある。一般的には           
 スライドボードがある。これはベッドだけでなく、浴槽に入るときに利用されるものである。入浴台、           
 横滑り板(台)といえば、どのようなものか想像できるであろう。使用、介助法も想像通りである。           
 具体的な作業内容は省略する。普通介助は一人で行える。
           
  次の用具はバスタオルやビニールシートで、二人介助になる。これらの用具を使用した方が、           
 安全で、要介護者の身体負担が少ない。ベッドから車椅子への移乗介助の内容を記述する。           
 この場合の車椅子は、リクライニング式(寝台様式)車椅子とする。要介護者にはベッドで横向き           
 (側臥位)になってもらい、ベッドの敷マットの上にバスタオルを敷く。そして仰向け(仰臥位)に           
 戻ってもらう。要介護者はバスタオルの上に、寝そべっている状態である。バスタオルの上部は           
 要介護者の首・頭部にあり、下部は膝付近にある。一人の介護職員がバスタオル上部の両角を           
 握り、もう一人がバスタオル下部の両角を握りしめる。それで介護職員二人がバスタオルを道具           
 にして、要介護者を抱え上げ、リクライニング式車椅子へ寝かせるのである。移乗中、要介護者           
 はハンモック状になっているのである。車椅子上では、バスタオルを敷いたままにしている。次に           
 車椅子からベッドへ移乗する場合は、そのままバスタオルを利用できる。さらに、車椅子から風呂           
 (寝台浴)へ移乗される場合は、バスタオルを利用しない。二人で直接身体を担ぎ上げ、寝台浴           
 の専用スライドベッドに横たわってもらうことになる。ビニールシートはバスタオルと全く同一の           
 利用法である。ビニールシートがバスタオルより耐久性が良い。
           
            
            
  つぶやき話のテーマ2:  移乗は健つけ
           
 「健つけ(移乗したい対象物に健康側をつける)は、移乗時のキーワードである。           
  移乗は要介護者の許容行動範囲を利用して行うものである。        」           
            
  両脚に支障があり、自力で車椅子へ移乗できない人の場合は、どちら側に車椅子をつけても           
 差異はない。介護職員の力が多いに必要になるだけである。ところが、片方だけに支障ありの           
 人の場合は、健康側の脚の方に車椅子をつけるのである。即ち、健康な脚を基軸にして、自分           
 自身の体重を支え、支障ある(患部)の体を車椅子に近づけて、椅子に座り込むのである。かなり           
 の作業部分を自立で行うので、介護職員の介助負担は軽くなる。車椅子から、自動車の座席へ           
 座りたい場合も同様である。健康側の脚を自動車の扉側に置き、健康な脚で体重を支え自動車           
 の座席へ座り込むのである。この動作で、患部を移乗対象物側につけたら、自立動作がしにくく           
 介護職員の介助負担が大きくなる。くれぐれも要介護者の自立支援が介護職員の使命である。           
 移乗時のキーワードは、移乗したい対象物に、要介護者の健康側をつけるである。           
            
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     第3章 介護   (その5:その他)
           
  つぶやき話のテーマ1:  片膝つきはダメ
           
 「介護作業の基本姿勢は、四股座り、和式トイレの雪隠座りである。           
  近頃西洋様式トイレになれて、和式トイレ座りがしんどくなってきた。」           
            
  各介助作業の基本姿勢は、要介護者を見上げて行う姿勢である。上から目線では行動をして           
 ならない。ごもっともである。要介護者が起床して、ベッドから車椅子へ移乗する場合を想定して           
 みよう。要介護者は目が覚めたので、寝間着から普段着へ更衣する。要介護者は足を床につけ、           
 ベッド上に座っているとする。足が冷たいので靴下をはく。介助が必要であると介護職員の姿勢           
 は和式の雪隠座りである。普段着を着衣する場合、上着類は中腰の姿勢、ズボン類はこれまた           
 和式の雪隠座りである。靴を履く場合も同様な姿勢である。これで車椅子を近づけてベッドから           
 移乗していただくのである。車椅子へ移乗する場合、要介護者の姿勢はベッド上に座っている。           
 そこで要介護者は徐に立上がり、車椅子への移乗動作を開始する。ここで幾分かの介助支援           
 が必要な場合、介護職員は雪隠座りの姿勢から徐々に立上がることになる。
           
  高齢者になって来ると、正座がしんどくなるように、雪隠座りの姿勢もしんどくなる。ましてや           
 雪隠座りの姿勢から、重たいものを持ち上げるように労働をするのでさらにしんどい。そこで私は           
 片膝をついた姿勢で対応している。すると立上りが、だいぶ楽になる。この片膝つくことは介護           
 の基本姿勢に記載されていない。ダメな姿勢である。その理由は床に着けた片膝が汚れて不潔           
 である。要するに、若くてバリバリの介護職員を基準に教育体系が組まれているのである。よぼ           
 よぼの老いぼれが、ぼけぼけの老いぼれを介護するとは、介護教育する側の人達は想定して           
 いないのである。少しは老老介護のやり方と題して、介護教育の内容も追加変更してはもらえ           
 ないであろうか。介護は若い人だけがするのでない。今後は高齢者も加わる。
           
  私は介護実技研修会で、足浴を実習する時、雪隠座りの姿勢はつらいので、片膝つきたいと、           
 インストラクターに申し出た。インストラクターは、「要介護者に片膝つくことを言って了解を得な           
 さい」と回答された。この指導を受けて実技をスムーズに行え、実技試験をパスできた。片膝が           
 付けなかったら、実技どころではない。太腿が痛くなって我慢が出来なくなっていたであろう。           
 若い頃の私であれば片膝つくよりも、床に座布団を敷き、尻をつけて入念に足浴を行うであろう。

           
            
            
  つぶやき話のテーマ2:  TVからCDへ
           
 「テレビやカラオケは集団で楽しめる。集団生活の娯楽には適している。           
  少しは個人的な時間や楽しみもほしい。そこで個人用CDプレーヤーである」           
            
  集団生活の娯楽にはテレビ観戦は最適である。近頃、歌謡曲の番組が少なくなって困っている。           
 そこで市販の歌謡DVDをかけると、一心不乱に見てもらえる。次は料理番組である。食後であるが           
 テレビで見せられた料理がおいしそうだと話のタネになる。ダメなのは国会中継。これは放映しても           
 すぐに居眠りが始まる。薬ではないが、立派な安眠剤である。国会の討議が何であっても安眠剤           
 になるのである。なんと平穏な時間であろう。介護職員は残った仕事をあわただしく片づけられる           
 時間である。居眠りをもくろむテーマではない。娯楽の変化を記述しているのである。
           
  テレビ観戦でも、部屋に個人用テレビを持ち込んでいる人の場合は、好きな番組を心置きなく           
 見ることができる。部屋が相部屋の場合、テレビの音声はイヤホーンで聞いてもらっている。           
 各人がテレビを持ち込んでいる状況ではない。ごく限られた人である。近頃はテレビではなくて           
 個人的に音楽を聴いて、リラックスしてもらっている。ベッドで過ごす時間が長い人の場合、音楽を           
 聞いていただいているのである。音楽は相部屋の他の人にも聞いていただいている。うるさいので           
 やめろとのクレームはない。流す音楽は童謡、唱歌、抒情歌、クラッシック等、静かなものが多い。           
 食事の時は、テレビを消して静かなCD音楽をかけている。食堂の雰囲気も良いように感じる。
           
  団塊世代が入所者になっている頃は、スマートホーンのような携帯機器でテレビを観たり、音楽           
 を聞いたりしているのであろう。           
            
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  つぶやき話のテーマ3:  お菓子の差し入れ
          
 「介護施設入所者の訪問はできるだけ、お見舞い品(お菓子)なしで行こう。          
  どうしても差し入れしたければ、品物が介護職員経由で渡るようにしよう。」          
           
  高齢者は一般的に甘いものが好きである。親類の方々が面会に来られた時等に、お菓子が          
 お見舞い品として差し入れられることがある。「後で召し上がってください」と言って訪問者は          
 お見舞い品を直接本人に渡す。これは「ああそれは、ダメよダメダメ、絶対にダメ」である。          
 どうしても差し入れしたい品物があれば、介護職員を経由して本人へ渡るようにしよう。介護          
 職員は必ず要望通りに実行する。品物を介護職員に渡していただくのは、次のような理由から          
 である。
          
  ①お菓子類の腐敗防止ができない          
   食物類が本人へ直接わたると、自己管理で自室の棚上や枕下に長期間置かれる場合がある。          
  すると消費期限が切れたり、冷蔵庫で保存していないので、カビが生えたりすることがある。         
  この状態のものをひそかに食されては、食中毒の原因になりかねない。
          
  ②誤嚥の危険性がある          
   お菓子種類によっては、嚥下しにくいものがある。ひそかに(介護職員による食事見守り         
  ができていない状況)それらのお菓子を食されて誤嚥された場合、生命維持に危険がおよぶ。
          
  ③お菓子類が糖分制限ありの人へわたる 
   人はいただき物を他人へ、おすそ分けしたいものである。差し入れのお菓子を同室の人達          
  へ分け与えることが発生する。入所者のなかには病気のため糖分摂取に制限ありの人がいる。          
  その人へお菓子類がわたると危険である。
          
  結論として、介護施設入所者の訪問はできるだけ、お見舞い品(お菓子)なしで行こう。          
           
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