朝日新聞 2019年3月26日 朝刊を読んで

 見出し 特養の入所者窒息 准看護師「有罪」 長野地裁「確認怠った」

     食事事故の過失「人ごとではない」

 概略内容 長野県安曇野市の某特別養護老人ホームで女性入所者(当時85歳)がドーナツを食べ、その後に死亡した事件があり、長野地裁松本支部は、3月25日、食事介助役で業務上過失致死の罪に問われた松本市の准看護師Y被告(58)に、求刑通り罰金20萬円の有罪判決を言い渡した。判決後、弁護側は判決を不服とし、即日控訴した。

  判決は、女性は食べ物を口に詰め込む傾向があり、窒息対策などとしておやつがゼリーに変更されていたと指摘。変更について被告は施設の引継ぎ資料などで確認すべきだったのに怠ったと過失を認定した。

 

 私見 ぼやき

  まずは、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。

  本事案を遅まきながら掲載したのには、私の気持ちや考え方の整理ができなかったからである。それは、

窒息死に至らせたのは、引継ぎ資料に記載されている内容の確認を怠ったためであると過失を認定されたからである。これは介護ワーカー(准看護師)個人の過失責任になったことである。施設には何の責任もない。私は施設にもミス防止の徹底を怠った責任はあるといいたいのである。

  私は人間はミスするもの、そのミスを防ぐような仕掛け作りが何重にも必要であり、それを徹底させるのが、組織(施設)や職務体制(上司)側の役割と思っている。伝言メモのような引継ぎ資料の内容を徹底させるために、就業前に全員で唱和などをしていたのであろうか? 入所者全員の引継ぎ事項(注意事項)を、すべて唱和していたら、30分あっても時間不足であろう。

  今でも私は就業30分前に職場のワーカー室に入り、全員への通達事項ファイル、職場内の引継ぎノート(新規の注意事項等)入所者のバイタルチェックメモ等に目を通している。さらに新規入所者のケアプラン、面談書類があれば読んでいる。

 

  食物の呑み込みが悪い(嚥下障害)方がのどを詰まらせることがないように、ねばつくもち、パサつくカステーラなどを与えないということは、介護ワーカーの基礎知識である。この基礎知識でさえ修得していない人が、施設では介護ワーカーとして働けるのである。今回の事案は、准看護師(資格取得者)であったから、個人の責任になったのであろうか?

 

  本裁判は業務上過失致死の刑事事件の罰金である。本事件に関して、施設は無関係・責任なしとなると、残りは遺族と准看護師との民事裁判(賠償金、慰謝料)となる。民事裁判で、准看護師に多額の慰謝料が課せられることを危惧する。こうなったら、介護ワーカーは自動車の任意保険のようなものをかけて、介護の仕事をするしかないであろう。ここまで行き着くと、誰も好き好んで介護の仕事はしませんよ。

                               起稿   2019.8.15

 

2020.07.29 朝日新聞 朝刊を読んで

 見出し:1面 特養准看護師に逆転無罪 ドーナッツ提供後 入所者死亡。

     26面「おやつ事故で刑事責任」無罪 介護現場の懸念和らぐ。

 26面掲載の序文:入所者が不慮の飲食事故でなくなったら介助者は刑事責任を負わなければならないのか。准看護士が業務上過失致死罪に問われ、一審で有罪になった長野県の特養での窒息事故。東京高裁は2020年7月28日、逆転無罪判決を言い渡した。

 1面記事の抜粋:

 裁判長は「ドーナッツを食べて被害者が窒息する危険性は低く、死亡することを予見できる可能性も相当に低かった。刑法上の注意義務に反するとは言えない」と理由を述べた。被告は2013年12月、介護職員からおやつの配膳の手伝いを頼まれ、食堂で被害者女性にドーナッツを提供。女性は食べた後に一時心肺停止になり、約1ヶ月後に低酸素脳症で死亡した。施設側と遺族側の間では示談が成立したが、検察は被告を業務上過失致死の罪で在宅起訴した。一審判決は施設が事故の6日前に女性のおやつを固形物からゼリー状のものに変えたことを記録した資料の確認を怠った被告の過失とした。だが、高裁はこの資料について「介護職員間の情報共有のためのもので、看護師がすべての内容を把握する必要はない」と指摘。被告は介護職員からおやつの内容の変更を伝えられておらず、女性が事故の1週間前までドーナッツや饅頭を食べても、窒息などの事態は起きていなかったとして、死亡を予見することは困難だったとした。被告がおやつの内容変更を確認せずドーナッツを提供したことに刑事責任は問えないと結論付けた。 

 26面記事の抜粋:

 東京都葛飾区Y特養のA施設長談。Y特養では一審判決後、午後のおやつをゼリー状のものに見直した。それまではカステラなどの固形物とゼリー状の2種類であった。もし、固形のおやつを食べた人に何かあった場合、「形態確認」「注視」義務違反に問われるのではないかと、職員から不安の声が上がったためである。

 

 私見(つぶやき)

 現場の介護職員を少しは安堵させる判決であると思う。

 本事案は遺族と施設側で、示談が成立していたことを初めて知った。亡くなられた女性及び遺族に対して、誠意をもって折衝したのであろう。先ず民事裁判はスムーズに進めるように望みたい。それで本裁判は検察と被告人の刑事罰に関する裁判であることを、初めて知った次第である。

 遺族と施設側の示談内容を公開せいとは言わないまでも、施設側の再発防止策は明確に公開すべきである。東京都葛飾区Y特養のように、以後おやつはゼリー状のものとし、固形物は一切提供しないとする。これこそ再発防止の1対策である。

 本判決と同様の事故が介護職員の介助で発生した場合は、どのような判決になるのであろう? このような場合には、介護施設と介護職員(個人)は分けて考えなければならない。それとも、施設、個人の連帯責任になるのであろうか?                    追記起稿    2020.07.30 

 

 

2020.08.12 朝日新聞 朝刊 24面社会を読んで

 見出し:准看護師 無罪確定へ。  特養ドーナツ事故 検察が上告断面

 内容:東京高検は8月11日、上告を断念したと発表した。准看護士の無罪が確定する。

 私見(つぶやき)

  現場の介護職員を安心させる結果となった。ただ、誤嚥は撲滅できない事象である。誤嚥を防ぐために、色々な仕組みづくりを考えてゆかねばならない。最後に亡くなられた方のご冥福を祈ります。南無阿弥陀仏、合掌。                          追記起稿    2020.08.12