シーツ・タオルの役割

 敷きシーツは敷布団・マットを汚さないようにカバーする布である。敷布団に寝る人に清潔感を与える。バスタオルは湯上りに体についた水分をふき取る布である。これが本来の役割であろう。ところが介護現場では意外な利用法(共通点)がある。それは、人を移乗する際の道具として利用される。

 自立歩行できない方が入浴される際、介護士はこの方(Aさん)を、布団からベッド式浴場へ向かうのに、リクライニング型車椅子へ移譲させる。この身体介助は次のような手順で行う。Aさんを布団で仰臥位(上向き寝)から側臥位(横向き寝)にする。布団にバスタオルを広げ敷く。Aさんを仰臥位に戻す。バスタオルはAさんの肩から両脚部分まで広がっている。1人の介護士が肩側バスタオルの両端を握りしめる。もう一人の介護士が脚側バスタオルの両端を握りしめる。Aさんの身体はほとんどバスタオルにくるまれる。2人の介護士は、1、2、3の掛け声をかけて、Aさんを横にあるリクライニング型車椅子に乗せる。車いすで浴場へ向かう。脱衣室で着衣を脱ぎ去る。浴場にはベッド式浴槽がある。次はへリクライニング式車椅子から浴槽のベッド板への移乗だ。2人の介護士がバスタオルの両端を握り、車椅子からベッド板へ移譲させる。ベッド板を浴槽に沈める。Aさんの身体が湯船につかると、身体は少し浮上する。その際にバスタオルを取り去る。湯上りから、着衣、浴場から寝室のベッドに寝るまでは、手順が逆になる。

 布団の敷シーツは、誰が、どのように利用するのであろうか? 救急車の救急救命隊員である。寝たっきりの要介護者(Bさん)の様態が急変した。Bさんを救急車で病院へ搬送する際に、救急隊員は移譲用道具として利用する。2人の救急隊員が、Bさんベットの敷シーツの両端を握りしめる。救急車に搭載する転がしベッドに移譲させる。転がしベッドを救急車に乗せて病院へ搬送する。病院についたら診察用ベッドに移譲させる。

 寝たっきりの要介護者の移乗用道具として、リフト、滑り板、ビニールシート等があげられる。種々の道具はある。しかし布地が良いようだ。介護士としては、道具を手でしっかり握りしめられる安心感であろう。

                                   起稿 2024.01.30