2017年11月15日(水)朝日新聞の朝刊に、東京・老人ホーム 死亡の入所者肋骨骨折、元職員「大変な事した」と、見出しされていた。

 東京のN有料老人ホームで、8月に入所者のFさん(男性、当時83才)を殺したとして、警視庁は11月14日、M職員(25才)を殺人容疑で逮捕した。M職員は、「介護に対する自信がなくなった」として、9月21日に自主退職。その後、障害者支援施設で勤務していた。

 8月22日、M職員は入所者のFさんを、ホーム1階の浴槽に投げ入れてお湯を張り、沈めて殺害した疑いがある。調べに対してM職員は「布団を何回も汚され、いい加減にしろと思ってやった」と供述し、容疑を認めているという。「その後、浴室内も汚したので、腹が立って浴槽に投げ入れた」と供述しているという。以上が新聞に記載されている事件概況とその殺人動機である。 

 この事件の動機については、老人ホームの利用者・入所者さんの排泄介助に対する心得が、根本的な問題となる。介護を必要とされている方へ日常生活支援サービスは、利用者さんが食べて動いて排泄して寝ることを、支援及びお世話することである。それほど排泄介助は重要な作業である。

 私の職場でも、利用者さんが就寝中に便漏れされて、布団類を汚れることは度々ある。その都度、職員は利用者さんを脱衣、清拭、着衣の世話をする。その後、汚れた衣類の汚物を払い落し、しばらく消毒水につけて殺菌して洗濯乾燥させるのである。布団類も同じく消毒して洗濯・乾燥して、その後クリーニング業者へ再度洗濯を依頼する。乳幼児のお母さんがされる布おむつの洗濯と同じことを、大人に当てはめて行うのである。乳幼児の世話をしたこともない男性若者が、愛情もなく、仕事・お金のためと割り切ってしているのである。このような排便に問題がある利用者さんについては、職員1人に問題を抱え込ませずに、上司やリーダーが、グループ討議をして対策するのである。

 便漏れの清拭が、お尻まわるだけで、ペットボトル1本程度のぬるま湯で済めばラッキーです。泥便で背中、尻、脚まで汚れていると、浴槽で洗い流す段取りになります。朝食の前に朝風呂です。M職員はこのような作業を、度々していたことになります。「早くくたばれ、このくそじじい」と息巻く若者が多い中、M職員は我慢して排泄介助をしてきたのだが、ついに堪忍袋の緒が切れたのであろう。介護は1人で抱え込まず、周りの全員で、対応・対策に取り組むことを希望する。

 ここからは、N老人ホームの組織的な対応や取り組みについてである。

施設側は、本事案を入浴介助における見守り不足による事故として認識し、入所者さんが死亡されているので、警察にも届けられていると推測する。事案発生の8月~11月まで、施設及び警察は、いろいろと調査したのであろう。特に、入所者のFさんの浴槽のおける清拭で、肋骨まで骨折していたことが、大きな疑問点になったのであろう。発生直後、マスコミ等に騒ぎ立てられずに、施設、警察が連携して慎重に調査し、容疑者の逮捕に至っている。まずまずの対応であろう。本来はこのような事案を発生させてはいけない。施設側は、当時の勤務体制は国の基準を満たしているとコメントするよりも、再発防止策はこの通りと述べるべきであろう。

                                   2017.11.17 掲載

 

 

 

 

 2017年11月17日 シルバー新報を読んで。

 元職員、入居者殺害容疑で逮捕。 N施設緊急記者会見。 A社長、謝罪の言葉を繰り返した。「再発防止に全力」第三者機関設置、内部審査徹底も。

 M職員は入所者Fさんの排泄後処理のため、1人で入浴介助をしていた。その時、別の入所者からナースコールで呼び出され、その場を離れた。M職員が戻った時、Fさんは浴槽内でおぼれていた。このようにM職員は説明していた。しかし、ナースコールが押された形跡がない、遺体にも不審な点があったことから、M職員を中心に捜査が進められていた。M職員はこの間、社命により自宅待機をしており、9月21日付けで自主退職した。

 排泄後処理のため入浴させることは、ケアプランに明記されていないことである。N施設側としては、ケアプラン以外の事を行う場合、事前に相談するように決めていた。一緒に夜勤していたベテランのサブチーフに、何故相談しなかったのかという点が引っかかっていた。今後は、捜査への全面的な協力を行う一方、全社員への教育やメンタルヘルスケアなどを強化し、第三者による内部審査も行うと説明した。

  以上が、記載内容の概要である。

 

 N施設は再発防止策を述べていることを知ることができた。次に、浴室の溺死案件を、事故か事件かと、不審に思えた点を、警察と協力しながら、慎重に究明していったことを知ることができた。

                                  2018.01.07 掲載

 

 

 朝日新聞とシルバー新報を読み比べて

 

 M職員の犯行動機を、朝日新聞は週刊誌並みに記載し、シルバー新報は一切ありません。

 再発防止について、シルバー新報は明確に記載し、朝日新聞は一切ありません。

 

 私とすれば、犯行動機を明記して、そのための具体的な改善策や再発防止策を記載してほしいと思う。他の施設で、このような案件を発生させないための手本になるからである。

 最後に、Fさんのご冥福をいのります。

                                 2018.01.07 掲載

 

 

  2019年10月11日の毎日新聞から

 「老人ホーム殺害、元職員に懲役16年 取り調べ音声の信用性は認めず 東京地裁判決」

 

 弁護側は「殺意はなく、犯罪が成立するとしても、業務上過失致死罪にとどまる」と主張したが、判決理由でS裁判長は「被告の行動は通常の介護とは到底認めることはできず、殺害しようと考えた以外に説明できない」と指摘した。裁判員裁判で出た判決である。元職員Mには罪を償い、早く更生してほしい。亡くなられたFさんのご冥福を祈ります。合掌。                 2019.10.16 掲載