朝日新聞 2016年6月19日

 介護費倍増 「離婚しかない」を読んで

 

 朝日新聞は離婚しかないと見出しにしたが、その後、生活保護を申請し、社会保障制度を有効利用と書いてほしかった。さらに、息子よ娘よ介護の必要な親を見捨てろと、追記してほしい。子供たちが変に里心を発揮すると、親たちは生活保護の申請が通らない。子供が親を見捨てると、親は介護保険や他社会保障制度を有効に利用できる。子供たちは仕事に専念できる。両方とも介護の苦渋から逃れられて幸せになれる。子供たちは親介護のために退職するな。社会保障制度を有効に利用せよ。会社の総務担当者は、社員に退職されないように、親の介護をするなと教育指導せよ。介護離職をゼロにするために! 新聞には上記のように書いてほしかった。

 

 なぜ、世帯分離をしていたのか? 一部は、良き後見人・ケアマネージャー・民生委員等、知恵者の助言によるものと推測する。配偶者・扶養者は被扶養者と同居世帯であるのが、通常の夫婦・家族生活である。同居世帯のまま、配偶者が要介護状態になり、介護施設で介護サービスを受けると、施設の入居費、食費等が要介護者(個人)負担となる。要介護者(個人)が、家賃や食物代を払うのは、当たり前のことであるのだが。ところが低所得者を支援するために、要介護者が一人世帯となり、住民税が非課税になると、介護施設の家賃や食物代を免除(社会保障費から援助)することができたのである。だから要介護者は世帯分離をするために、現住所を介護施設内にしていたのである。

 

 介護費用が月8万から17万円に倍増した。さてその内訳は? 増額した9万円は入居費と食事代と記載されている。それでも支払っていた8万円の内訳は? 約4万円は身体介護等費用の一割個人負担分(要介護度5)である。残りの4万円は明細に書かれていない。この4万円に、オプション費のおむつ代、散髪代、栄養補給の特殊飲料代が含まれていても少し多すぎる。合計で月1万円程度とする。それでは残りの3万円は何の費用であろう。

 

 ここからは憶測である。2年前に介護施設(特別養護老人ホーム)に入居できた。この入居条件にオプションサービスの料金が含まれているように思う。特別養護老人ホームには、4人の相部屋(多床棟)と、個室(ユニット)の区別がある。当然相部屋と個室では介護サービスのグレードが異なるし、支払う料金は個室が高い。その高い料金(差額)こそ3万円であろうと思う。それではそんな高い個室に入所したのか? 4年も待って、やっと特別養護老人ホームに入所できるチャンスが来たのである。3万円程安価な相部屋は満杯で、入所できません。しかし個室はたまたま空きが出ました。いかがなされますか?4年間も入所待ちをしていたのである。普通であれば、月17万円かかります。世帯分離されているので、入居費や食物代は免除されます。8万円で済みますよ。少々高くなっても、他の介護付有償老人ホームに入所するよりは大幅に安い。 即座に個室へ入所すると決められたことであろう。介護者は専門職に世話してもらえるので、胸をなで下ろされたことだろう。

 

 ところが法改正である。

 2015年8月から家賃や食物代を免除される条件が厳しくなった。世帯分離していても、要介護度が低ければはずし、個人資産額1000万円あれば免除の適用からはずす。このため、免除からはずされた方々は、通常の負担に戻ったのである。それで介護費用が月8万から17万円に倍増した。

 

 本当は通常の介護サービス料金に戻ったのである。

 

 特別養護老人ホームに入居できたことは、民間の有償介護付老人ホームに入居した方々よりは、経済的には安価で、恵まれていると思うのだが。さらに特別養護老人ホームの入居まち者よりも、恵まれていると思うのだが。このように記載したら、2016参議院選挙のアベノミックスを問うにはならないからであろう。

 

 ここからが、担当の施設ケアマネージャーの悩みごとになる。

入所者で免除該当者の資産状況を調査しなければならない。法改正の基準に該当する。ケアプランを変更して、負担増までも、要介護者及びその保護者や後見人に説明して、了解を得なければならい。

 説明を受けた保護者や後見人からは、介護サービスのグレードは落ちるし、負担する料金は倍額になるし、踏んだり蹴ったじゃないか。どうしてくれるんだと怒鳴られることもあるだろう。施設ケアマネージャーとすれば、相部屋に空きが出た場合、優先的に個室から相部屋入所へ変更することを約束する程度であろう。それでも数年待ちと条件付きである。

 

 

 根本は安価で入所できる介護施設が不足している。介護入所まちをゼロにせよ。

 

 

 新聞が本来記載すべきことは、要介護度5の人が月8万程度で入所できる介護施設をどんどん作れであろう。介護待機まちをゼロにせよ。入所者と自宅で介護入所待ち者の差異をなくせ。そのためには、どのような対策や手段があるか提起すべきである。

 

 

 さらに、中間層 広がる老後不安。

 即ち中間層が破産する。これは団塊世代が要介護状態になった時の課題である。老後のために国は、何にもしていないと、これまた問題提起だけである。

 

 団塊世代よ。20年後の介護ビジョンを作り上げよう。

 だから、団塊世代が介護施設に入所し始める20年後(85才)のために、今から施設を作り始めろ。20年後までには、介護待機まちをゼロにせよ。そのためには税金をもっと介護に投入せよ。なければ消費税をすぐにもっと上げろであろう。新聞は口が裂けても、このように言わないね。

 

 

 それでは本題の離婚しかないに話を戻す。 

 

 そこで世帯分離から1歩先に進めて協議離婚をする。完全なる単身世帯で低所得者となった。国民年金のみでは介護サービス費用を賄えない。そこで生活保護を申請して各種の社会保障制度を利用するのである。

 生活保護者が要介護状態で介護施設に入居すると、家賃や食事代は生活保護(生活扶助。金の出所は介護保険)が負担してくれる。65才以上が支払う介護保険料(生活保護の生活扶助。)そのもの、さらに身体介護等費用の一割個人負担分(生活保護の介護扶助。金の出所は介護保険)も面倒見てくれる。残る9割分は当然介護保険と国税が支払ってくれる。個人負担分が2割や3割になっても、生活保護が面倒をみることになるであろう。もちろん病気の治療が必要となれば、医療費も医療費扶助で負担してくれる。だから要介護状態の生活保護者は金銭的な負担が非常に少ないことになる。

 

 そこで個人負担の軽減のためには、離婚して生活保護を受ける手段しかないと述べているのである。

 

 新聞に記載された内容を参考に、要介護度5の方の介護費用を試算する。衣なし、食住及び介護まかない付きで、その総額は月当たり約53万円であろう。但し、介護保険の掛金の負担分は除いている。

 

  介護総額の大雑把な内訳:

   *身体介護等費用の1割個人負担分  4万円(要介護者負担)

   *施設入居費と食事代        9万円(本来要介護者負担を社会保障制度が代わって負担)

   *入居施設のオプション費用     4万円(要介護者負担)

   *身体介護等費用の9割負担分   36万円(介護保険料、国税で負担)

 

 要介護度5の方が必要最低限度の介護生活をされるには月当たり約50万円になるということである。その内の7割(35万円)程度は国税と、介護いらずの健康な方々の介護保険金でまかなわれているのである。このような内訳を再認識したうえで、個人負担の介護費倍増見出しの根本的な対策を考えてほしい。

 

 団塊の世代は、年金月当たり30万円程度で夫婦二人、税金や社会保障費などを払いながら、慎ましやかに生活している。とりえはただ健康なだけである。その世代が一人でも介護を必要とする状態になると、家庭は破産する。だから、中間層広がる老後不安と結んでいるのである。だったら早く対策を提案して、改善に取り組んでほしいのだが。改善施策は与党野党関係なく同じと思う。与野党とも協力して早く改善策を見つけ出して、取り組んでほしい。

                                 

 

 団塊世代の介護ビジョンは? 私見は極端すぎるが、数年かけてまとめてみようと思っている。

 

                                     2016.06.21に投稿。